第19章 二つの正義
「水琴!」
「うん!」
今度こそ水琴はエースの手を取る。
邪魔をしてくると思ったが、意外にもスモーカーは動かずじっとしている。
「……スモーカーさん?」
「俺たちの獲物はギャリー一味だ。お前たちじゃねェ」
素直じゃない彼の「見逃してやる」サインに水琴は頬を緩める。
「次海で会った時は覚悟しておくんだな」
「その時はおれが相手になってやるよ」
屋根に飛び移りエースがスモーカーを見下ろす。
水琴を連れ、エースはその場を離れた。
「スモーカー大佐!これは一体…?」
海兵を引き連れたたしぎが場を見渡す。
倒れ伏すギャリーと一味。
それだけならばスモーカーが一人で倒したとも思えるが、その場には明らかに彼の仕業ではない焼け焦げた跡なども見て取れる。
「たしぎ。こいつら連行しておけ」
「は、はい!」
「スモーカー大佐!港に白ひげがいると情報が!」
「放っておけ。今の俺たちの戦力じゃ話にならねェ」
海の方を見つめ、スモーカーは新しく葉巻を咥える。
「水琴……か」
自分がやったことを偽善だと言いきった女。
この世界で、自分の考えが受け入れられないと分かっていても、それを押し通す意志の強さを秘めた目を思い出す。
ただの世間知らずの女かと思ったが、どうやらそうでもないらしい。
「今回だけだ……次はねェ」