第19章 二つの正義
「水琴!平気か……って」
水琴の横にいるスモーカーを見てエースは足を止めた。
「……水琴、こっち来い」
「エース、でも」
「いいから来い。お前そいつが誰か知ってんのか。海軍だぞ」
「でも、助けてくれたの」
「何だって…?」
むくりとスモーカーが起き上がる。どうやら血の効力が出たらしい。
「そうか…どうしてこんな女が賞金8000万ベリーかと思えば…」
スモーカーの目が水琴を睨む。
既に騒ぎのせいでウィッグもサングラスもとれ、水琴は手配書通りの姿を晒していた。
「白ひげの所に異世界の民が転がり込んだとは噂で聞いていたが…お前のこととはな」
「てめェも水琴を狙うか…?」
「勘違いするな火拳。俺はそんな血に興味はねェ」
ふぅー、と煙を吐き出す。
「ただ、お前が白ひげであり続ける限り。俺はお前たちを逃しはしないってだけだ」
異世界の民だからではなく。
ただ、海賊だから狙う。
スモーカーの理論はいたってシンプルだ。
「おい、水琴」
まだ傍に立ちつくしていた水琴を見下ろす。
「なぜ、俺を助けた」
お前にとっちゃ、俺も敵だったはずだ。
「…海軍だから敵だって、誰が決めたんですか」
スモーカーの問いに水琴は応える。
「海賊と海軍は相容れねェ敵同士だ。今ここで捕まっても文句は言えねェぞ」
「別に、恩を売るために助けたわけじゃないです。ただ、私が助けたかったから助けた。偽善だと受け取ってくださって結構です」
「分からねェ女だ…」
「スモーカー大佐!」
ばたばたと海兵が集まってくる。