第19章 二つの正義
普通ならば有り難い申し出だが、水琴の仲間は海賊。
会わせるわけにはいかない、と水琴は集まってきた部下に指示を出すスモーカーに首を振った。
「あの!大通りまでで大丈夫です!そんなお手を煩わせるようなことは…!」
「市民の安全を守るのは海軍の義務だ。気にするな」
だからこそ、断ろうとしているのだが水琴の正体を知らないスモーカーにその想いが届くはずもない。
「スモーカー大佐!こいつら、張っていたギャリー一味のようです」
部下の一人がスモーカーへ駆け寄り報告する。
どうやら海軍が追っていた一味だったらしい。
なんでスモーカーがここにいるのかと思ったが、よく考えれば彼は海軍本部の人間。
新世界に居ても不思議じゃない。
「御苦労。お前たちは引き続き頭を追え。俺はこの女を送り届ける」
「はっ!!」
「あの、本当に大丈夫ですから…」
「この町を甘く見るな。なんでお前みたいな普通の女がここにいるのか知らんが、ここはこの海域じゃ有名な海賊の掃溜めだ。窃盗、人攫いはもちろん、殺しだって日常茶飯事に起こりやがる。
知らないで寄ったなら災難だったな。早いとこ仲間とこの町を出た方がいい」
普通に心配してくれるスモーカーにやっぱりこの人良い人なんだなぁと内心呟く。
キャラの中でもかなり好きな方だから仲良くなりたいのは山々だが、水琴は海賊。
残念だが、仕方がない。
「そういえば、女」
前を歩いていたスモーカーが水琴を振り返る。
「お前、名前は」
「………えぇっと」
引っ込んでいた冷や汗が再び流れる。