第19章 二つの正義
「この俺の目の前で人攫いとはお前ら全員覚悟は出来てるんだろうな」
「海軍の奴だ!」
「相手は一人だ、やっちまえ…!」
スモーカーが一人であるのを確認し獲物を抜く。
しかし、スモーカーに対してはそんな物意味がない。
彼らが獲物を振り上げようとしたその瞬間、スモーカーから白い煙が生まれる。
それは一息で距離を詰め、彼らが握る獲物を叩き落した。
「んなっ、てめェ、能力者…?!」
「ガキは眠りな」
あっという間に人攫いたちが地に沈む。
「強い……」
「大丈夫か」
一瞬でついた決着にぽかんとしていた水琴は差し出された手を握り立ち上がる。
いつの間にか座り込んでいたらしい。
「あの、助けていただいてありがとうございました」
「こんな場所女一人で出歩くもんじゃねェ」
「それが、その、仲間とはぐれてしまって…」
「仲間……?」
じろり、とスモーカーの視線が水琴を射抜く。
その視線に心臓が跳ねるが、なるべく平静に見えるよう見つめ返す。
視線を泳がせたらばれる。絶対。
「…ついてこい」
ふいにスモーカーが踵を返した。
「え……?」
「案内してやる。仲間はどこだ」
「え?!」
まさかのスモーカーの申し出に声を上げる。