第19章 二つの正義
今の水琴はハニーブラウンのショートボブに、大きめのサングラスといった出で立ち。
女は髪形と化粧で化けると言うが、手配書とはまるで別人だ。
これはこれでかわいい!と沸き立ったクルーをエースが叩きまわったのはご愛嬌。
「別に船で待っててもよかったのに。この島じゃ水琴はそんな楽しめないだろうしさ」
「いや!私だって白ひげクルーの一員だもん。治安が悪いからって理由で留守番じゃ格好付かない!」
ハルタの言葉に水琴はぐっと拳を握る。
誰もそんなこと気にしないのに、とハルタは内心呟くが彼女は本気だ。
彼女は彼女でクルーの一員としてあろうと息巻いているようだ。
その心意気を理解しているからこそ、白ひげも上陸許可を出したのだろう。
まぁ、隊長4人を付ける時点で過保護振りは窺えるが。
誰だって、娘を危険な場所へはやりたくないものだ。
「ここには情報収集で寄っただけだからな。面倒事に巻き込まれる前に船戻るぞ」
「あ!それじゃあラクヨウにお土産買いたいなー」
今日の留守当番は七番隊のため、上陸することが出来なかったラクヨウへお土産を買おうと思っていた水琴は真っ先に手を上げる。
「何買うんだ?」
「えっとねー、ブレスレット!この前ラクヨウが付けてたやつ壊れたって言ってたから」
「……おい」
「あぁ、良い獲物だ」
わいわいと通りを歩く水琴達を遠巻きに窺う怪しい影。
「船長に伝えろ。“雛は緑の巣へ入った”」