第19章 二つの正義
「ま、なんとかなるよ」
へらりと水琴が笑う。
家族となってからよく見せるようになったその笑顔はどこか締まらないが、距離があった以前の笑顔よりずっといい。
「だって、みんながいるし」
「…あァァもうこの子はっ!」
がばっ!とサッチが抱きつく。
「何嬉しいこと言ってくれんだほんとに!」
「サ、サッチ苦しい…!」
「ま、俺たちの目が黒い内は水琴に指一本触れさせないけどね」
「ハルタ男前!ついでにサッチ引き剥がして!」
「あっはっは、やだ」
「鬼!!」
ケラケラと笑うハルタを水琴が睨む。
「島が見えたぞー!!」
賑やかな食堂にクルーが一人駆けこんできた。
「隊長!島です」
「着いたかよい」
報告を聞きマルコが立ち上がる。
「よしお前ら、話は終わりだ。さっさと準備しろい!」
「「「おぉ!」」」
***
「なんか怖そうな雰囲気…」
サングラス越しに街を眺めながら、水琴は小さく呟いた。
なんだろう。例えて言うなら某夢の国の海賊映画に出てくる海賊たちが集まる港町みたいな…
あちこちから向けられる歓迎とは程遠い視線や時折聞こえる喧嘩の音に思わず身を屈める。
「この島は治安が悪いと報告を受けている。あまり我々の傍を離れるなよ」
「ビスタ」
ビスタの言葉にこくりと頷く。
そして見慣れない色の前髪を不安そうにいじった。
「ねぇ。やっぱり変じゃない?」
「大丈夫さ。よく似合ってる」
「そうかなぁ…」
イゾウに似合っていると言われるが、それでも慣れないものは慣れない。
隣でエースが大きく頷く。
「手配書で顔も割れてるしな。こういう島じゃ変装しといた方がいいだろ」
「分かってるけど、落ち着かない」