第18章 血と絆
出航の日がきた。
最後の挨拶に、と水琴はエースと共に施設を訪れる。
「…それじゃあ、またね」
別れを惜しむ子ども達に後ろ髪を引かれるように、水琴は背を向ける。
「お姉ちゃん!」
そんな水琴にぱたぱたと一人の女の子が駆け寄った。
「あのね、これみんなで作ったの!」
差し出されたのは庭で笑う水琴とエース、そして子ども達の絵。
右上には歪んだ文字で“海賊のお兄ちゃんとお姉ちゃんへ”と書かれている。
「またお話聞かせてね!」
「おれ大きくなったら兄ちゃんみたいな海賊になる!」
「元気でね!」
わいわいと子どもたちが一斉に話しだす。
「行ってらっしゃい!!」
笑顔で言われたその言葉に水琴は目を見開く。
そして一度顔を伏せ、すぐに満面の笑みを上げた。
「行ってきます!」
「……よかったな」
施設が見えなくなった頃、エースがくしゃりと水琴の頭を撫でる。
「……うん」
一生懸命描かれた絵を見つめ、水琴は微笑む。
血ではない、確かな絆がそこには描かれていた。