第18章 血と絆

「なんで、そんな風に笑ってられんだ？」


　恨んだりはしなかったのだろうか。


　生まれたばかりの赤子を置き去りにするなんて、下手すれば死んでしまうようなことをした親を。


　嘆いたりはしなかったのだろうか。



　温かい家庭に囲まれる友達を見て、自分の境遇を。




　自分の境遇と重ねながら、エースは尋ねる。



　「＿＿最初から、笑えてたわけじゃないよ」


　しばしの沈黙の後、水琴は答える。


　「小さな頃はそれが普通だったから気付かなかったけど。成長するにつれて、周囲との違いや視線に気付いて、シスターに当たったりしたし。どうして私なんだろうって泣いて過ごした夜もあったし。

　＿＿捨てるくらいなら、生まないでほしかったって、親を恨んだ時もあったよ」



　でもね、と水琴はエースを見て微笑む。



　「そんな私をシスターは温かく支えてくれて。兄弟達の笑顔は私の心を癒してくれて。
　…ようやく、私も気付けたの」



　あぁ、生きててよかったって。




　「本当の家族の事は何一つ知らないけど。私は血の繋がりだけが家族じゃないと思う」



　生まれも育ちも関係なく、白ひげ海賊団のみんなが家族のように。



　「血よりも固い絆があるから。

　だから、私は笑っていられるんだ」




　それに今はエース達みたいな心強い家族もいるしね。と水琴は笑う。


　その笑みはまっすぐで、エースにはとても眩しく感じた。