第17章 父の日
「こりゃあ……」
「みんなに聞いたんです。父親に送る曲で相応しい物はないかって」
オルガンの前に立ち、水琴はにっこりと笑う。
「__私から、親父さんへ」
聴いてください、と水琴は座る。
「さァ親父。座った座った」
「お前らも酒持て酒!」
促され白ひげは席に座る。
すぅ、と水琴は息を吸い、背筋を伸ばす。
そして奏で始めた。
この世界の者なら誰もが知っている、有名な曲。
娘が風に乗せて、父親へ今までの感謝を伝える曲。
サッチが作戦を伝えて、二週間。
白ひげに気付かれないよう、曲を調べ練習するのは大変だっただろう。
それにもかかわらず、水琴の奏でる曲はぶれることなく甲板へ響き渡った。
_____、
最後の一音が伸び、消える。
「……いつもいつも、私達を見守ってくれて、ありがとう」
親父さん。
「父の日、おめでとう!!
私、親父さんの娘になれて、幸せです!」
「水琴……」
嬉しいこと言ってくれるじゃねェか、と白ひげは笑う。
「さァ乾杯だ野郎共!!」
「親父に日頃の感謝をこめて!」
「「「乾杯!!」」」
甲板に乾杯の音が高らかに鳴り響く。
多くの子ども達に囲まれ、その中心で白ひげは豪快に笑っていた。