第106章 穏やかな日常と不穏な陰
「はい、これ」
「………」
少年たちは顔を見合わせるとおずおずと手を伸ばし受け取る。言葉はなくとも嬉しそうなその表情に、水琴も自然と笑みを浮かべた。
「次は引っかからないように、広いところで遊ぶんだよ」
ありがとう、と礼を言い去っていく少年を見送る。その横にフランが並んだ。
「水琴さんは悪魔の実の能力者だったのですね」
「うん、風人間なんだ」
「そうでしたか」
「なにかまずかったのか?」
フランの物言いたげな様子にデュースが口を挟む。まずいという程では無いんですが、と前置きを挟んでからフランは周囲に人の気配がないことを確認するよう視線を走らせた。監視の目がないことを確認し、静かに水琴たちを見る。
「皆さんにはお伝えした方がいいでしょう。__レジスタンスのことはご存知ですか」
「あぁ、昨日女将さんから聞いたな」
「今この国では鎮圧のために軍が動いています。その指揮を執っているのが将軍オリバー。二年前、王が体調悪化を理由に国政から離れてから徐々に台頭し始め今では事実上の国のトップです」
「将軍がトップ?普通は大臣とかがいるんじゃないのかよ」
フランの言葉にキールが首を傾げる。本来はそうなのですが、とフランは沈痛な面持ちで続けた。
「城内の勢力図は分かりませんが、今は軍が大きく力を持っている状態なのです。彼はその力をより磐石なものにするため、更に強い力を集めようとしています。__悪魔の実を」
「だが悪魔の実なんてそう簡単に見つかるものでもないだろう」
「そうですね、ダグさんの言う通りです。なので代わりに狙われているのが」
「能力者、ってことか」
エースの言葉にフランは静かに頷く。
確かに能力者の軍隊が作られればそれは海軍にも匹敵するだろう。悪魔の実の能力が全て、とは言わないが、強力な力であることは間違いない。だが__