第105章 芸術の島
「つまり、明日やらなきゃいけねェことはフランの母親に会うことと速やかな出航の為の準備ってことだな」
「そういうことだな」
話をまとめたエースにダグが頷く。ログが問題だな、とデュースがダグへ視線を向けた。
「ダグ、この島のログはどれくらいで溜まるか知ってるか」
「一日だ。明日の夕刻には出航できるだろう」
「できれば朝に出たかったけどな」
「ログはどうしようもねェからな。しょうがねェよ」
キールの嘆きにエースが返す。夜の航海はより危険が伴う。キールの言葉は尤もだったが、島の状況を考えれば一刻も早く出航した方が良いだろう。
「話は終わっちまったかい?」
ノック音と同時にドアが開きトウドウが顔を出す。遅れてやってきた仲間に全員の視線が集中した。
「あぁ、今話してたのは__」
「あーいい、いい。話は後でダグからゆっくり聞くさ。それよりも先にこっちを片付けてくんな」
そう言ってドアの向こうに隠れていた片手を全員に見えるように突き出す。途端にエースの目が輝きだした。
「飯!!」
「本来は夜は下の食堂で提供するらしいんだが、例の禁止令のせいで飲食業は夜間営業禁止らしくてなァ。女将さんがそれじゃあ可哀想だからって夜食を作ってくれたワケよ」
提案を受けたトウドウは今まで手伝っていたらしい。どうりでいつまでも来ないと思った。
匂いを嗅ぎ途端に胃袋が空腹を訴えてくる。それに抗うことなく、全員がトウドウの差し出す夜食に飛びついた。
「ま、これ以上話しても詰められるもんもねェしな。明日になりゃあとはどうにかなんだろ」
既に先程までの話題に興味を失ったエースは一心不乱に口へと詰め込んでいく。
その量と速度に呆れながらも、確かにな、とデュースはサンドイッチを一口齧った。
「明日は何があるか分からない。今夜はしっかり睡眠を__って、今寝るな!!」
早速おにぎりを握りしめながらベッドに前のめりに沈んだエースを叩くデュースにリリィがくすくすと笑う。
張り詰めていた空気が普段と同じものに戻るのを感じ、水琴もまたサンドイッチを大きく頬張った。