第105章 芸術の島
全員が我が船の金銭状況を把握した同日夕刻過ぎ。
ピースオブスパディル号は芸術の島へと辿り着いた。
船番を誰か置くかと話したものの、先ほど言ったように財産らしい財産などないし、海賊旗も掲げていないスパディル号は他の船とあまり変わらない。
念のため風だけを纏わせておき、水琴たちは全員で船を降りた。
「さすが芸術の島、建物のデザインも凝っているのが多いな」
町中を歩きながらデュースが感心したように呟き手元のノートに何かを書きつけていく。
確かに壁にアートが描かれていたり、あちこちに何かを題材にした置物が設置されていたりと今まで見てきた町の中でもおしゃれな建物が多い。
個展でも開いているのか、大きく開け放たれたドアから中を覗くとたくさんの絵画が飾られている建物もあった。
しばらく歩くと衣類を扱う店があるのを見つけた。子どもの服もあることを確認し水琴は勢い良く手を挙げる。
「服買いたい!」
「服ゥ?金ねェって言ってんのに、服なんか__」
「女の子に、服は、重要です!!」
文句を言いかけるエースにずいと詰め寄れば勢いに押されたのかぐうと押し黙る。
その様子にトウドウが噴き出した。
「いやァ、尻に敷かれてんなエースは」
「敷かれてねェ!」
「自分のお小遣いの範囲内で買うからいいでしょ。じゃ、行こうかリリィ」
小さな肩を押せば、え?とリリィが首を傾げる。
「買ってあげる。一緒に見よう」
「え、でも、私は別に__」
「その服もだいぶ傷んできてるし、新調は必要だと思うよ。そのデザインが気に入ってるなら似たものを探せばいいし」
無理強いはしたくない。だが水琴はリリィが先程からそわそわと店頭の服に目がいっていることに気付いていた。
リリィだって年頃だ。おしゃれに興味があってもおかしくないだろう。
どう?と再度窺えばこくりと小さく頷く。
それを確認し、水琴は男性陣に待っているよう声を掛け店内へと入っていった。