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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第105章 芸術の島






 ***





 「金がない」

 一同が会する朝食の席で、デュースが開口一番に告げた言葉に全員が沈黙した。

 「前の島では賞金どころじゃなかったからな。率直に言えばじり貧だ」
 「お前が!全額賭けたりなんかすっから!」
 「あの時はキールも反対しなかったじゃねェか!」
 「しかし参ったねェ。最悪食料は漁で何とかなるにしても、金がかかるのはそれだけじゃねェからなァ」

 トウドウの言う通りだ。真水、日用品、医療道具、船の修繕道具など、挙げればきりがない。
 ダグの路銀を合わせても資金は十分とは言えない。

 「次の島で何か金策でもあればいいんだけどね」

 手っ取り早く賞金首などいればいいのにと思ってしまう水琴はだいぶ染まってしまっているのかもしれない。
 そういえば、と水琴はエースとキールのつかみ合いもといじゃれ合いを眺めていたダグを振り返る。

 「次の島のことってダグ知ってるんだっけ」
 「あぁ。芸術産業が盛んな島だ。島の住人のほとんどが何らかの芸術分野に携わっているらしい」
 「芸術の島かぁ」

 水琴の脳裏に美術館や舞台、音楽ホールなどが浮かぶ。普段ならば思い切り楽しみたいところだが、果たしてそんな余裕があるかどうか。
 せめてリリィの服だけでも新調してあげたい、と水琴は隣で朝食を食べるリリィに目を向ける。
 逃げ隠れしやすいようにか、リリィが持つ数少ない服は全て黒っぽくフード付きのものばかりだ。
 歌詠みとして狙われることを考えればその方が安全なのだろうが、過酷な旅の中でほつれは目立ち布は擦り切れ始めていて別の意味で目立つ。
 守り手も増えたことだし、どうせならリリィの着たい服を着させてあげたい。
 文句ひとつ言わず静かに硬いパンをかじるリリィをいじらしく思いながら、水琴は一人決意を固めていた。

 
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