第104章 サバイバルマッチ
「落ち着いた話は後で。まずはここを離れないと」
「……はい」
小さく頷くリリィを連れセットを下りる。船までの道はまだ遠い。リリィを担いだダグを挟むように水琴とデュースが先導し、海を目指した。
徐々に港が見えてくる。船にまとわりついていた海賊を蹴散らし、水琴たちはピースオブスパディル号へと乗り込んだ。
いつでも出航できるよう準備を進める。しばらくして島の方からおぉぉおおい!と叫ぶキールの声が聞こえた。
何かと思い手摺から顔を出す。多くの海賊を引き連れた三人が船へと駆けてくるのが見えた。
慌てて三人を引っ張り上げ船を出す。寸でのところで船は海賊たちの猛攻を受けることなく港を離れることができた。
「キール!ザザは?!」
「なんとかぶっ倒した!」
「だけどそれに観客達が逆上してなァ」
「最後には脱落した海賊団も交じった大乱闘」
「きりがねェから逃げて来たってわけよ」
「おれはまだイケるって言ってんだろ!」
戦いよりも騒ぐエースを連れ逃げた疲労が大きいのか。もう分かったっつーの、とキールが力無く呟く。
何はともあれこれで全員無事にそろった。自身のログポースを確認していたダグが顔を上げる。
「ログは溜まってる。もう島を離れても大丈夫だ」
未だ膨れるエースを何とか宥めながら、船はゆっくりと沖を目指す。
しかしその周囲を無数の海賊船が囲んだ。
「あいつら……!」
「ったく、脱落者は引っ込んでろよな!!」
見覚えのある海賊旗にデュースとキールは舌打ちをする。
「やっぱり全員ぶちのめして__」
相手の船へ乗り込もうとエースが手摺に足を掛けたところで、船が大きくぐらりと揺れた。
風が運んでくる雨の気配に顔を上げる。
気付けば晴れ渡っていた空は曇天となり、波は強くなり始めていた。