• テキストサイズ

【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第104章 サバイバルマッチ





 「大丈夫か」
 「うん、ちょっと水に濡れすぎちゃって」
 「あぁ、能力者だもんな」
 
 少し休めよというキールにかぶりを振る。

 「ダメだよ。早く行かないとダグの作戦が無駄になっちゃう」

 川下を見る。下流では勢いよく流れてきた川の水が氾濫し混乱が起きているはずだ。
 左右を川に囲まれていた中央広場も例外ではないはず。
 
 「混乱が収まる前にあの子を助けないと」
 「水琴には悪いが俺もその方がいいと思う。あの子のことだけじゃない。時間をかければかけるほどザザも体勢を立て直しちまうからな」

 あの様子じゃ見逃してはくれないだろう。
 デュースの言葉に早く広場へ向かおうと立ち上がりかけた水琴をトウドウがひょいと肩へ担いだ。

 「……トウドウ?」
 「お嬢は休んでな。広場までは俺が連れて行ってやらあ」
 「でも、重いよ」
 「なァに、お嬢くらい軽い軽い」

 言葉の通り軽々と運ぶトウドウに水琴は力を抜く。

 「……じゃあ、お言葉に甘えて」
 「おう。ちょいと寝心地は悪いが、勘弁してくれ」

 明るい彼の声に水琴は安心して身をゆだねる。
 寝心地が悪いと言うが、がっしりしたトウドウの腕は安定感があり子どものような安心感を覚えた。

 森の中を突っ切り水琴たちは中央広場へと戻る。
 そこはダグの予想通り混乱の渦中だった。

 中央広場を挟み込んでいた川は水嵩を増し氾濫しており、出ていた露店や店は水没している。
 勢いに足を取られ流されている海賊もおり、呑気に観戦という空気ではなかった。

 『ここに来てまさかの鉄砲水!果たして森の中はどうなっているのか!中継は無事繋がるのか?!』

 それでもマイクを手放さない司会者はある意味尊敬に値するかもしれない。響き渡る実況を耳にしながら、水琴は鳥籠を見上げた。
 少女は鳥籠の柵を掴み不安そうに見下ろしている。早くダグを連れて行き安心させたい、と水琴の胸は痛んだ。
 鳥籠は高く組まれたセットの上にあった。近づけばどうしても目立ってしまう。

/ 1122ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp