第104章 サバイバルマッチ
__ゲームを繰り広げる川の遥か上流。
緻密な計算で組み上げられた堤防が川の流れを堰き止めていた。
少しずつ、少しずつ水を蓄えた簡易的なダムはその重量に耐えきれず一筋の亀裂を生む。
それを皮切りに、堤防は大きな音を立て破裂し、崩れた。
「来た……っ」
水が瞬く間にせり上がってくるのに気付き、水琴は風を生む。同時にダグはロープを結んだ手斧を振り投げた。
手斧が近くの木へと巻き付き固定されたのを確認して水琴は風を展開する。
「竜巻!」
生まれた風は水琴たちを水の脅威から守るよう包み込む。
その直後、穏やかだった川は一気に勢いを増し水琴たちを襲った。
「なんだ?!」
「頭、流される!」
何の構えもなくダグが人工的に引き起こした鉄砲水を受けたザザたちはその勢いに耐えきれず押し流されていく。
水琴はといえば、想像以上の水の圧力に早くも挫けそうだった。
「水琴、平気か?!」
「いや、無理無理無理無理!」
水の勢い全てを殺せるわけではない。足元をすくおうとする流れに必死に耐えながら水琴は半泣きで叫ぶ。
「ダグもう平気?!」
「大丈夫だ」
全員の身体にロープを巻き付け終えたのを確認し、水琴は風を散らせた。
川の流れに呑まれようとする水琴たちをダグが木に巻き付けた一本のロープが支える。
全身が濡れ一気に力が抜ける感覚を味わいながら、水琴は自身を支える腕に気が付いた。
「平気か」
「エース……」
「もう少し踏ん張れ。あと少しだ」
エースに支えられながら水琴は何とか川岸へと辿り着く。
ペタンと力なく座り込む水琴にキールが駆け寄った。