第104章 サバイバルマッチ
「エース!!」
戦闘中とは思えない和やかな空気になりかけた三人の耳にキールの叫び声が届いた。
素早く視線を向ける。ザザの金属で覆い固められた足に踏みつけられ、自由を奪われているエースが見えた。
「ぐ……っ!」
「威勢が良いのは終わりか?」
ザザが胸をつぶさんと足に力を込める。両手でそれを阻止しながらも、痛みにエースの顔が歪んだ。
「ち__ッ」
刀を構え助けに入ろうとしたキールは動くな、というザザの一言で止まる。
その手には小型の大砲が握られていた。標準はエースの頭にぴたりと合っている。
「おしいところまで行ったがここまでだな。さっさと全員メダルをよこしな」
「……っ」
「早くしろ。このガキの頭が吹っ飛ぶところが見たいのか?」
砲身がエースの頭を小突く。何をしようとしてもザザが引き金を引く方が速いだろうことを察した水琴は首からメダルを外した。
デュースとトウドウ、キールも水琴に続きザザの方へ放り投げる。
部下に命じそれを拾わせると、ザザは懐から取り出した自身のメダルケースに全てのパーツをはめ込んでいった。
「これで優勝は俺たちだ」
勝利の笑みを浮かべていたザザは完成したメダルを見てその笑みを引っ込める。
ぴったりと綺麗な円を描くはずのメダルが僅かに欠けているのを見てザザは眉を寄せた。
「足りない……?!」
「ようやく出しやがったな」
足元でエースがにやりと笑う。
風を切る音がした。それはザザの手元を弾き、メダルケースを吹き飛ばした。
いるはずのない“六人目”の気配に、ザザは一瞬意識を持っていかれる。その瞬間、武装の隙間を縫う強烈な蹴りがザザを襲った。
衝撃にザザは近くの木へと激突する。器用に足だけで振り抜き蹴りを放ったエースは解放された上体を起こした。
その隣に六人目が並ぶ。
「おせェよダグ。もう少しであばらイくかと思っただろうが」
「すまない。だが、これでメダルのパーツは全て揃った」
手元から取り出した水琴たちのメダルケースには不足なくメダルの欠片が収まっている。
「我々の勝ちだ」
静かに己を見据える隻眼に、ザザは歯を食いしばった。