第104章 サバイバルマッチ
『……ん?こ、これはなんと!』
司会者の戸惑う声が響く。
『現在のメダル数を集計!
一位は一番人気、“首狩りのザザ”賞金六千万は伊達じゃない!』
おぉぉおお!!と歓声が上がる。
『そして二番手は……なんと!参加人数たったの五人!ひらめく旗は漆黒の闇、稀代のルーキー海賊団だァァ!!』
観客から盛大なブーイングとヤジが飛ぶ。
司会の言葉と共に中継画面が切り替わる。
そこには海賊相手に暴れまくるローブをまとったエースたちの姿が映っていた。
たった五人の人間が次々と海賊を蹴散らしていく。
「なんだぁ?ガキがふざけやがって!」
「ザザの邪魔してんじゃねーよ!早く誰かやっちまえ!」
様々な言葉が飛び交う中、リリィはローブ姿の五人をじっと見つめる。
「………え」
拡大された映像に切り替わった時、リリィの目に見慣れたものが飛び込んできた。
五人のローブを留める木の葉や花、鳥を象った木工細工。
長い船旅の間、リリィの心を慰めようとダグが何度も作ってくれたものとよく似ていた。
自分はあまり得意ではないけれどと言いながら、その言葉通りそれらはどこか不格好で温かかった。
懐を探りウサギの細工を取り出す。一番最初に作ってくれたそれはリリィの宝物となっていた。
映像を見る。既に映像は切り替わり、ローブの留め具など小さなものは確認できなくなっていた。
ただの勘違いかもしれない。でも。
もしかして。もしかしたら。
「__ダグ、」
鼓動が先程までとは違う想いで早鐘を打つ。
立ち上がり、リリィはゲームの中継を映し続ける画面にじっと目を凝らした。
ゲームは既に最終局面に入っている。画面の向こうでは一位と二位のチームがぶつかろうとしていた。
画面が荒れる。何者かの攻撃により、中継ドローンが破壊されたのか激しい音と共に映像は途切れた。
それに観客たちは落胆の声を上げる。
風がリリィの髪を揺らす。
待っていて。もうすぐだよと。その風は言っているように聞こえた。
手元の細工を握りしめる。あれだけ胸を占めていた恐怖はいつの間にか溶けて無くなっていた。
代わりに胸を満たすのは期待と高揚感。
リリィの高鳴る胸を揺さぶるように、森の方で地を震わす巨大な音が響いた。