第104章 サバイバルマッチ
何とか乗り込んだ小船の中、ダグの腕で少女は両親を想い泣いた。
その悲しみに応えるように海は荒れ、そのおかげで二人は追っ手を撒き逃げ延びることができた。
「独りになってしまったあの子をわたしは放っておくことができなかった。このグランドラインのどこかにあるという歌詠みたちの住む島へ送り返すことを約束し、二人で旅を続けていたのだが」
海賊たちに捕まりこのざまだ、とダグは己の無力を吐き出す。
何とか居場所を突き止めたダグはこっそり潜入し、彼女を取り返そうとしていたのだ。
「彼女の両親には逃げる際命を助けてもらった恩もある。わたしは必ずあの子を助け出し、島に送り届けてやりたい」
「事情は分かった。だが一体どうやって彼女を取り返すつもりだったんだ?エントリーしていない人間がいくらメダルを奪っても優勝は出来ないだろう」
「たとえエントリーしても優勝が難しいことは分かっていた。場を混乱させ、その隙に取り返すのが関の山だろうと。だからそのための準備を進めていた」
デュースの問いに答えるダグはゲームの終盤、観戦者も巻き込むある仕掛けを用意しているのだという。
「ただ、その仕掛けをうまく発動させるためには制限時間いっぱい時間を稼ぐ必要があった。今回はザザが参加している。奴ほどの腕があれば制限時間を待たずにメダルを完成させてしまう恐れがあった」
だからメダルが完成しないように、欠片を一つ奪おうとしていたのだ。
「自分の存在を最後まで悟らせぬよう、少人数のチームから奪おうとお前たちに目をつけていた。……まさかこんなことになるとは思っていなかったが」
「それはたぶんお互い様だな」
キールの言うように、まさかゲームに参加してこのような事態になるとは思わなかった。
鳥籠の中で小さくなり脅えていた少女を思い出す。あの子は今も恐怖と戦いながら、ダグを待っているのだろう。