第104章 サバイバルマッチ
「さっきの初手は手斧だったんだな」
「すごいコントロール……!」
斧での攻撃を続けながら落ちた手斧を拾い投げる動きに寸分の乱れもない。
たった一人とはいえ決して侮れない相手に集中しようとする水琴だったが、ある一点が気になっていた。
なぜ。
なぜ彼はたった一人で戦っているのだろう。
胴元は五人でエントリーする自分たちに心底驚いていた。たった一人で参加している海賊団がいるとは考えにくい。
他に仲間がいるのなら、ここまで全く姿が見当たらないのもおかしな話だ。
それにさっきの問答。敢えてあんなことを尋ねる理由はいったい__?
斧が唸る。なぎ倒された木々を避けるため水琴は前方へ飛んだ。
その横に手斧を避けたエースが着地する。
男が手斧を構え、再び振り投げた。手斧は水琴たちを狙わず少し離れた木へと命中する。
ぶつ、と音がして縄の切れる音が微かに聞こえた。瞬間足元が浮き上がりバランスを崩す。
「え、うわ……っ」
「なんだっ」
気付けば二人は縄の網に囚われ宙吊りとなってしまっていた。
解放しようとキールが刀を構えるものの、男の攻撃に阻まれなかなか近づくことができずにいる。
「あの野郎いつの間にこんな罠はってやがったんだ」
「………」
舌打ちするエースの声を聞きながら、水琴は斧を振るう男を見つめる。
やはり何か違和感を感じる。
しかしそれが何かあと一歩のところで分からず、水琴は罠の中で必死に思考を巡らせていた。
「悪いことは言わん。メダルを置いて去れ」
「どこの海賊団の差し金か知らねぇが、こっちにも事情がある。はいどうぞと簡単に差し出せるか」
「差し金……?」
デュースの返答に男の気がざわりと揺らぐ。明確に感じる怒りの感情に、水琴は違和感の一端を掴んだ気がした。