第104章 サバイバルマッチ
「___!!」
突如頭上から人影が飛び降りてきた。影は水琴を的確に狙い武器を振り下ろす。
前方にばかり気を捉えていた水琴は頭上からの攻撃に一瞬対処が遅れた。
その水琴の前に大柄の影が飛び出す。構えた銛は頭上からの一撃を金属音を響かせ受け止めた。
「__お嬢には近づけさせねェよ」
「トウドウ!」
奇襲の失敗したローブ姿の襲撃者はトウドウから距離を取り、獲物を構える。
その手に握られた大ぶりの斧は、どこかで見たような気がした。
「……あ」
「どうした?」
「あの人、昨日食堂に一人でいた人かも」
よく見ればあのローブも同じものだ。体格といい、斧といい、昨日食堂で見た人物とほぼ同一人物だと断言できた。
水琴の言葉にデュースは一人?と怪訝な表情を浮かべる。
「俺らよりも少ない数でエントリーした奴が居るのか」
「でも胴元の話じゃ私たちが最少人数だって言ってたけど」
「別になんでもいいさ」
ざ、とエースが一歩前に出る。
「向かってくるなら叩き潰す」
「__お前たちはなぜこのサバイバルマッチに参加した」
拳を構えるエースに、対峙する影は静かに問い掛ける。
フードの影から漏れる低い声音からは感情を読み取ることは出来なかった。
「お前たちも歌詠み狙いか」
「興味ねェよ。おれが狙うのはあくまで優勝、それだけだ」
「ならば悪いことは言わん。今回は手を引け」
男の忠告にエースは短く嫌だね、と返す。
それに対し男はそうか、と淡白に呟いた。
「では、悪いが力づくで退場してもらう」
手元の斧を地に突き立てる。そして両手を背後に回した。
現れた複数の手斧を構え、両手を大きく振り投げる。四本の手斧は左右から水琴たちを囲うように正確に飛んできた。
それをエースたちがそれぞれの獲物で叩き落す。その隙に男は突き立てていた斧を取り突進してきた。
振りかぶられた斧が地面を抉る。衝撃から逃れるように水琴たちは四方へ散った。