第104章 サバイバルマッチ
「あ、ねぇ」
少し進んで水琴は手に持ったままのメダルを突き出す。
「これ誰が持つの?」
「そのまま水琴が持ってろよ」
「えー?やだよ!」
エースに言われ、水琴は即座に拒否の異を唱える。
このサバイバルマッチではメダルを奪われたら即失格。どの海賊団も血眼になってこのメダルを狙ってくるだろうことは想像に難くない。
「標的になるだけじゃん!」
「水琴なら風になってすぐ逃げられるし、大丈夫だろう」
「遠距離攻撃できるお嬢が持ってるのが一番安心だわな」
「突っ込んでいくこと確実のエースに持たせるのはちょっと心配だしな」
「おいそりゃどういう意味だ」
男性陣全員に言われ水琴は口を閉ざす。
確かに、言われてみれば納得はいく。
納得はいくが、怖いものは怖い。
「絶対に守ってよ?」
「分かった分かった」
気楽に答えるエースにいまいち不安はぬぐえない。
疑わしそうにエースを睨む水琴の背をトウドウが安心させるように叩いた。
「大丈夫だってお嬢。何かあったら俺が守ってやらァ!」
「おい、トウドウ。お前も突撃要員だろう」
「そういうのは若ェもんに任せる!」
本当にサバイバルマッチかと言わんばかりのいつも通りの空気に水琴は緊張の糸を緩める。
そうだ、気張ることはない。
いつも通りやれば大丈夫だろう、と水琴はメダルを首に通した。
森を出るために歩を進める水琴たちだったが、不意に目の前に複数の気配が生まれ足を止めた。
木々の間から複数の海賊が獲物をぎらつかせ現れるのを静かに迎える。
「おい、最初の獲物だ」
「たったの五人かよ。ルーキーか?」
「当たりだな。初っ端からついてる」
言葉と共にぞろぞろと現れる海賊たちはたった数名の水琴たちを見てラッキーだと口々に笑う。