第104章 サバイバルマッチ
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明朝。
支度を終えた水琴たちはルアン島の広場へ足を踏み入れた。
広場は両側を小さな川が流れており、その向こう側から島の住人たちがサバイバルマッチが始まるのを酒片手に見物している。
山を頂いた森を背景に巨大な液晶が設置され、そこにはオープニング映像らしきものが軽快な音楽と共に流されていた。
まるでオリンピックのような盛り上がりにこれがサバイバルマッチだということも忘れて水琴のテンションは上がる。
『さァとうとう始まった一大イベント!今回は二十チームがエントリーだ!最後に立ち、賞金を手に入れるのは果たしてどこだー?!』
マイク片手に司会が声を張り上げる。
その声におぉぉおおお!!!とあちこちで歓声が上がった。
『今回は賞金一億ベリーに加え、前代未聞の賞品付きだ!!
伝説の存在……その歌は海を操り、自然を手中に収める!
__“歌詠み”だ!!』
「……“歌詠み”?」
聞き慣れない言葉に水琴は首を傾げる。
さっとめくれた布の下から現れたのは、巨大な鳥籠に入れられたまだ年端もいかない少女の姿だった。
少女の姿が現れたと同時に更に周囲は声を上げ盛り上がる。
その異常さにデュースは眉を顰め、水琴は不快感から目を細めた。
「まるで見世物だな」
「あんな小さな女の子を賞品?完全に人身売買じゃない」
「“歌詠み”__そういや聞いたことあんな」
記憶を探るようにキールが視線を上げる。
「なんでも歌詠みが紡ぐ歌は自然を操るって話だ。あいつらにはグランドラインの荒波も、海王類も関係ない。この海を渡っていく海賊にとって見れば、便利な“道具”なんだろうさ」
「道具って……っ」
「自分達の都合の為に道具扱いか。粋じゃねェな」
鳥籠の中、不安そうに海賊達を見下ろす少女を黙って見つめる。