第16章 家族
「居候のくせに、異世界の民の血のせいでみんなに迷惑を掛けて…
おまけに、海軍にばれてしまったせいで、これからもっと海軍に狙われる可能性が高くなってしまって…」
ごめんなさい、と震える声で謝る。
泣くのはずるいと分かっていても、自分のふがいなさに止めることは出来なかった。
「…謝られる理由が、分からねェなァ」
そんな水琴の肩に大きな手が触れる。
「船長さん……」
「水琴。てめぇは何も出来ねェと嘆くがそんな風に思ってる奴はこの船にいやしねェ」
「そうだ!水琴がくれる差し入れうまいぞ!」
「おれも、水琴のオルガン聴いてると癒されるんだよなぁ…」
洗濯してると必ず声掛けてくれるしな!
そうそう!
あちこちから挙がるクルーの声に困惑する。
「見ろ水琴。これでもお前は何も出来ねェなんてほざくのか」
「でも…私は……」
「それにお前は身を挺してこの船を守ろうとした。
ただの居候なんかじゃねェ。
お前は立派な、俺達の家族だ」
向けられる温かい視線に涙腺が緩む。
もう涸れ果てたと思っていたのに、嬉しい涙は別らしい。
「私、ここにいていいんですか…?」
もっとしっかりとみんなの顔を見たいのに、ぼろぼろと涙は零れて視界はクリアになってくれない。
ひっくひっくとしゃくりあげながら、水琴は続ける。
「これからも、きっと迷惑掛けます…でも、それでも…
___私、家族になっていいんですか……?」
「住む世界が違っても、いつか帰ってしまっても。
お前は俺の立派な娘だ」
温かな温もりと言葉に、水琴は泣き続ける。
こうして、夏島レガールでの騒動は幕を閉じた。
それからもモビーディックは新世界を変わらず突き進んでいる。
変わったことと言えば一つ。
「水琴ー。こっちも頼む」
「えー。モックやってよ!私もうほとんどやったよ!」
モビーディックに一人の“家族”が増えたこと。