第103章 グランドラインへ
クロッカスが水琴の隣に並び、その手に先程のエターナルポースを握らせる。
「これは、君に預けよう」
「え、でも……」
「別に彼に渡さなくてもいい。この旅路の果てにやはり必要ないと判断したら、海に投げ捨てたって構わん。
__ただもしいつか、己の血と向き合う気ができたなら。この海の先を、見てきてほしい」
そこで、ロジャーはいつまでも彼を待っている。
「待って……?」
それはどういう意味なのか。
尋ねたい気もしたが、きっと答えてはくれないだろうとも思った。
その答えを知る手段はただ一つ。この海の先へ至ることだけ。
「分かりました」
手の中のエターナルポースをそっと見つめる。光を反射し、針はただただ一点を差し続けていた。
「エースが必要だと感じるその日まで。これは、私が預かります」
ありがとう、とクロッカスは頭を下げた。
***
クロッカスに見送られ、船は次の針路を目指す。
飛び出していったあとのことを知らないのでエースとデュースは大丈夫だろうかと心配していたが、甲板でいつも通り過ごす二人を見て無事に収まるところに収まったらしいことを知りホッとした。
「おい」
灯台の明かりを見ていた水琴は声を掛けられ振り返る。
そこはやや気まずそうにしたエースが立っていた。
「その」
「うん」
「………さんきゅな」
ぼそりと小さく呟かれたそれを水琴の耳は正確に拾う。
水琴の返事も待たずにさっさと離れていってしまった後ろ姿を見送りながら、水琴は頬を緩めた。
「さて、お前さん方休んでる暇はねェぞ!最初の海は荒れるって聞いたからな。島につく前に難破なんて笑い話にしたくなかったらきりきり働きな!」
「「「 おう! 」」」
トウドウの声で皆一斉にバタバタと動き始める。
作業しながら、水琴は二度目となる前半の海を見つめていた。
遂にグランドラインへ入った。
どこまで一緒に行けるか分からないけれど。
船首で遠い海を眺めるエースを見つめる。
___許される限りは、彼の航海を見守りたい。
太陽の乗る船は進む。前半の海をひたすらに。