第103章 グランドラインへ
「ったく、気にしてるのはあいつらの方じゃねぇか」
水琴の背後でデュースが呆れたように溜息を吐く。
その通りだなと水琴は笑った。その肩にどっしりとトウドウの腕が置かれる。
「ま、あんまし気にするなってことさ。俺は呼び捨ての方が嬉しいがね」
「トウドウさん……ううん、トウドウ。そうだね、仲間だもんね」
敬称を使われるのは、確かに少し距離を感じるだろう。
どうやら壁を作ってしまっていたのは私の方らしい。
「ねぇキール!」
まだ言い合いを続けるキールへ呼び掛ける。
「さっき包丁で指ばっさりやっちゃったんだけど血が止まらなくて。手当てしてくんない?」
「お前それ早く言え!!」
だってあんな流れになるとは思わなかったんだもんさ。
怪我と聞き言い合いを止めたキールは水琴へ駆け寄り傷の具合を診る。
赤く染まる傷テープを剥がせば深く切ってしまった傷口からはまだ血が滲み続けていた。
その様子を見たキールは腰元のポーチから必要な道具を取り出してきぱきと処置をしていく。
「ったく。なんでロギアが包丁で指怪我するんだよ」
「さー。私もいまいち分からなくて」
手当てをしてもらいながら本当に不思議だなと思う。
本来ロギアに物理攻撃は効かないはずだが、日常のふとした場面ではその特性が働かない時がある。
ルフィのゴムゴムの実はいつでもどこでも有効だったというのに、悪魔の実は奥が深い。
「ほら、これでいいだろ」
「ありがと」
止血された手を軽くぐーぱーしてみる。動きを阻害することなく綺麗に巻かれた包帯に流石だなと水琴は改めて彼の技術の高さを感じた。
「おーい。見えてきたぜ」
舵の操作に戻ったトウドウがみんなに呼び掛ける。
手摺に駆けよれば前方に島が見えてきた。
「あれがローグタウン……」
海賊王が処刑され、この時代の始まりを告げた場所。