第102章 船医
槍の切っ先に糸を通すように刃の先が触れる。
どんな刃も通さなかった槍が、その先端を起点に亀裂が走りまるで竹のように裂け砕けた。
「__弱点をひけらかしてくれてありがとよ。切れ目があるって分からなきゃ、いくら何でも切れなかった」
「コイツ、こんな僅かな隙間を……?!」
「余所見してていいのか?」
驚愕するヴァレリーはキールの言葉にはっと上空へ目を向ける。
その顔面へ、エースの渾身の一撃が叩き込まれた。
地面に縫い付けられるようにヴァレリーが地に沈む。ピクリとも動かない様子を見て、エースもまた大きく息を吐き腰を下ろした。
ドッグの方を見る。頭をやられ勢いを失くした海賊たちが次々と戦闘不能にされている様子に一連の騒動が決着を見せつつあることを察した。
「とりあえずこれで船は何とかなんだろ」
「おい」
背後から声が掛かりエースは振り向く。刀を片手にキールは肩見せろ、とエースの横に膝をついた。
「もろに受けたろ」
「お前こそ腹に受けたろ」
「自分のことは分かる。医者に患者放っておけって言うのか」
エースが了承する前に強引に患部を診る。しばらく診察した後ようやく納得したのか折れてねぇな、と手を放した。
「なんで折れてねぇんだよ」
「なんで少し残念そうなんだよ。お前ほんとに医者か」
「エース、キール君!」
海賊たちの捕縛も一通り済んだのか、水琴が小走りに駆けてくる。少し遅れてデュースも駆けてくるのが見えた。