第102章 船医
「__海賊王を、超える?
そりゃ傑作だ!海賊王を目指す馬鹿な奴らは少なからずいるが、それを超えようなんて奴はどの海探したっていやしねェ!」
「じゃあおれが最初なんだろ」
笑い飛ばすヴァレリーに淡々と返す。その瞳が全く揺るがないのを見てヴァレリーは笑みを消した。
「……出来ると思ってんのか?」
「出来るか、出来ねェかじゃねェよ。__やるか、やらないかだ」
出来る出来ないは結果であり、未来だ。
そしてやるかやらないかは、自身の意志。
未来で意志を決めるのではない。
意志が、未来を広げるのだ。
「おれは、やると決めたらやる。障害になる奴は全員ぶっ倒す。……まずはてめェだ」
「__面白れェ。そんな死に掛けの身体でオレを倒せるってんならやってみな!!」
「キール!!」
視界の端、未だ倒れたまま顔だけあげていたキールが驚きに目を見開くのが見える。
「任せた!!」
それだけ言い、エースは走り出した。
廃材を投げその陰からヴァレリーを狙いつつ、四方から打撃を繰り出すがヴァレリーの槍はそれをことごとく防いでいった。
「何が任せただ。あんなボロボロの奴に何が出来る!」
「何度も言わせんなよ。出来る、出来ないじゃねェんだ。__それにな、あいつは“やる”男だ」
力強く踏み込み跳躍する。上空で無防備となったエースを串刺しにするべくヴァレリーは槍を構えた。
だがエースの真下からヴァレリーの眼前に白銀の刃が迫る。その素早さからすぐさま標的を変更し、ヴァレリーはキールを貫こうと槍を放った。