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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第102章 船医




 ***


 鋭く突き出された槍の一撃が身体のすぐ脇を抉る。続けて繰り出された横への振りはしゃがみ込み避けた。頭上を二撃目が掠っていき、その直後折り曲げた両足を一気に伸ばし地を蹴る。だがその時には三撃目が眼前に迫りつつあった。
 舌打ちをし、エースは迫る槍の柄に手をつきヴァレリーの背後へと大きく跳躍する。一度距離を取れば、流れるような攻撃はぴたりとやんだ。

 「ちょこまかと、猿みてェな野郎だ」
 「立ち回るのは得意でね」

 悪態をつきながらも隙のない様子に内心歯噛みする。槍の生み出す間合いと連撃はエースの得意な間合いとは相性が悪かった。
 懐にさえ入ることができれば簡単なのに、そこまでの一歩が及ばない。

 「隙がねぇな」
 
 隣に並ぶキールが顔をしかめ零す。こちらの呼吸の合間を縫うように繰り出されるキールの刃もエース同様なかなかヴァレリーへ届くことは無かった。

 「あの槍が邪魔なんだよな。お前さ、カトラス切ったみてェにあの槍切れねェ?」
 「同じ刀剣ならともかくあんなぶっとい槍切れるか。__俺がアイツの気を引き付ける。お前の拳じゃあの槍をさばき続けるのは難しいだろ」
 
 どうにか隙を作るから、最後は任せたと言うキールを無言で見る。
 先程まであんなに自分で落とし前をつけると頑なだったというのに。どんな心境の変化か知らないが、元々は大局を見れる奴なんだろう。
 それは今までの連携で十分感じていた。自分勝手に動くエースの動きを全く邪魔することなく絶妙なタイミングで繰り出される剣筋は余程場の空気を読むことに長けていないと難しい。
 視線が気になったのか、訝し気にキールがなんだよ、と睨む。別に、と返しエースは再び前を向いた。

 「んじゃあ、頼んだ」
 「任せとけ」

 行くぞ、と言うキールを合図に飛び出す。先程までとは逆に前を走るキールの背を睨みながら、エースは不意に訪れるだろう攻撃の機会を逃すまいと目を凝らした。
 目の前で槍と刀が激しく打ち合う。だがどでかい槍と細身の刀では分が悪いのか、次第にキールが壁際に追い詰められていった。


 
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