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【ONEPIECE】恵風は海を渡る【エース】

第16章 家族


 

 「落ち着いたか?」
 「うん、ありがと…」

 ひとしきり泣き、赤くなった目を擦る。
 いつの間にか頬の血も止まっていた。

 「……何?」

 まじまじとこっちを見つめるエースにたじろく。
 もしかして、泣きすぎて変な顔になっているのだろうか。

 「いや、やっぱそっちの方がいいな」
 「何が?」
 「敬語無い方がさ」

 なんか水琴らしい、と笑うエースに途端に気恥ずかしくなる。
 そう言えば、思い切り怒鳴り合ったせいで敬語という概念がすっぱり抜けていた。
 だけれど不思議と、私も違和感がない。

 「これからはそうしろよ」
 「うん……」
 「さて、じゃあ行くか」

 エースが入ってきた窓へ近寄る。
 ガラスは派手に割れ、もはや意味をなしていない。

 「……怖いか」
 「ううん」

 下を見れば結構な高さだ。
 落ちれば命はないだろう。

 心配そうに私の様子を窺うエースに笑い掛ける。

 「エースがいれば、怖くないよ」

 力強い腕が、私の腰を支える。

 「しっかり掴まってろよ」

 邪魔にならないよう手を肩に回す。
 それを確認するとエースは一歩踏み出した。
 重力に従い二人の身体はあっという間に落下する。



 ゴォッ!!


 エースから生まれた炎の勢いで落下の速度が緩む。
 エースのしなやかな筋肉が屋根を蹴り、猫のように二人は地面に降り立った。

 倒れ伏すドラゴンを横目に一本橋を渡る。
 しかし半分ほど来たところで巨大な鉄球が橋を真っ二つに断ち割った。

 「ちっ、巨人族か」
 
 巨大な鉄球を操る巨人族が向こう端で第二球を構えているのが見える。
 不安定になる足場をエースに支えられ跳躍するが、橋は崩れ落ち行き場はない。

 「エース!!」

 誰かの声と共にふわりと柔らかな地面に着地した。

 「マルコ、ナイスタイミング!」
 「え…マルコさん?」

 地面だと思っていたのは不死鳥の背だったらしい。
 蒼い炎が煌めく。

 「水琴、無事かよい」
 「うん…心配掛けてごめん、マルコさん」

 ありがとう、と労わるようにその背を撫でればちらりとあの眠たそうな目が私を見上げてくる。

 
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