第102章 船医
「見つけたぜ、生意気なガキが」
「お前ら、まだ懲りてないのかよ」
「うるせェよ。舐められっぱなしでいられるか」
「どうやら忠告はその軽い頭には残らなかったみたいだな」
あの時よりも多い人数にキールは舌打ちをし刀へ手を掛ける。
そんなキールに並ぶようにエースが横に立った。
「何の真似だよ」
「話は終わってねェからな。……それに、待つのはもううんざりしてたとこだ」
おれも交ぜろ、と拳を鳴らすエースにキールは文句を言いかけるも襲い掛かる海賊に刀を構える。
「っ邪魔すんじゃねぇぞ!!」
「お前がな!!」
迫る海賊の刃をさばく金属音が響く。
それを皮切りに乱闘が始まった。
水琴もまた襲い掛かる海賊たちを迎え撃つため腕を構え風を起こす。
「~~っもう、多い!!」
「よほどおかんむりと見えるな、あの海賊たちは……!」
デュースと背後を守りあいながら戦うがあとからあとから湧いて出る海賊たちに嫌気がさしてくる。
殺さぬよう加減をしているとはいえ、何度も立ち上がるそのタフさは一種の尊敬すら覚える。
「__妙だな」
水琴の風が敵を蹴散らし生まれた空白の数秒で息を整えながら、デュースが呟く。
「妙って何が?」
「何度も立ち向かってくるくせに、戦い方は単調。かといって逃げるそぶりも見せない。まるで何かの時間稼ぎみてぇだ」
「時間稼ぎ……?」
海賊たちの様子に違和感を覚えたのはキールも同じだったようだ。間合いをはかりながらどういうつもりだ、と声を上げる。
「俺を倒したいんじゃないのかよ。そんなんじゃいつまで経っても終わらねぇぞ」
「……へへ。別にてめぇを倒すのが目的じゃねェよ」
倒れ伏した海賊の一人が笑みを浮かべる。もうほとんどの海賊が立ち上がれない状況の中、それでもにやにやと笑う様子は不気味だった。