第102章 船医
「堂々巡りだよなぁ……」
「なに悩んでんだよ」
「親子関係って難しいなって」
引っかかるものはあるが、何はともあれもう一度キールに会おうと三人は酒場を出てスラムを目指す。
スラムに行くならついでに海賊もやっつけようと提案したエースだったが、それは即座にデュースにより却下された。
今のところ大きな被害はないようなので、船医の当てをどうにかしてからの方が良いというのが彼の弁だ。
すぐそこに獲物がいるのに待てを命じられ続け不満げなエースを宥める。が、爆発するのも時間の問題だろう。
もうこれ以上こじれるタネが現れないことを祈るのみだ。
スラムにつけばすぐにキールを見つけることができた。
座る彼の周りには子どもたちがいる。一人一人に何かを手渡しているようだ。
「こっちはいつもの喉の薬、寝る時に吸うようにな」
「ありがとう」
「ラナには湿布薬な。もう高いところから飛び降りるんじゃないぞ」
「はーい」
その場で必要な治療を的確に施し、袋から薬を取り出し丁寧に説明して渡す姿は刀を振り回していた時とは違い完全に医者の姿だ。
薬を受け取り去っていく子どもたちを優しく見ていたグレーの瞳がこちらを見つける。
「デュース。……と、またお前らか」
「またとはご挨拶だな」
「落ち着けエース」
キールのぶっきらぼうな物言いにむっとなるエースの前にデュースが立つ。
ここは自分たちよりも友好関係を築いているデュースに任せることにしよう。