第102章 船医
「すごい剣技……」
あれだけ静かで速い剣を見たことがない。
居合という技術があるが、なんとなくそれに近いものをあの青年の剣からは感じた。
扱っている獲物が刀だからだろうか。それでもゾロの扱う剣とはまったく異なる。
同じ剣でもここまで違うのだなと感心し、水琴は横に気配がないことに気付いた。
「あっ」
「ッなんだお前?!」
「海賊だ!!」
「あぁぁぁあああ?!?!」
気が付けばエースは走り出しており、あろうことか先程の青年へと殴り掛かっていた。
いやほんと何やってんの?!
しかし青年もやはり只者ではないようで、鞘ごと抜いた刀身でエースの拳を受け止め逆にはじき返す。
拳を弾かれたエースは後方へ飛び、嬉しそうに声を上げた。
「やっぱ強ェな」
「エース!あんた何やってんの!」
「いや、勧誘しようと思って」
「はああ?」
勧誘で殴り掛かる奴があるか。
しかしエースは本気だったようだ。これからグランドラインに出るなら強いやつ仲間にした方がいいだろ、とあっけらかんと答える様子に脱力する。
「海賊……?」
「っ!!」
しかし戸惑うように聞こえてきた青年の声にそんな場合ではなかったとはっと水琴は顔を上げ振り向く。
「お前ら海賊なのか?」
「そうですけど、悪い海賊じゃないんです!この町を襲うつもりもないんで、ここはどうか穏便に__!」
悪い海賊じゃないってどういうことだ、と内心突っ込むが今はこれ以上騒ぎを大きくしないことが大切だ。
慌てて二人の間に割り込み弁解する水琴に被せるように、目の前の青年はじゃあ、と口を開いた。