第102章 船医
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「まずはどこで聞き込みする?」
デュースと別れ大通りに向かいながら、水琴は隣を歩くエースにこれからの動向を尋ねた。
「適当に店の奴らとかに聞けば知ってるだろ。チズルさんの話だとだいぶ迷惑してるみてェだしな」
「急いだ方がいいかもね。海軍とかち合っても困るし」
住人にも被害が出始めているという話だし、ローグタウンの隣町なのでいつ海兵がやってきてもおかしくない。
船が準備出来る前に海軍に追われるような事態になれば船医探しどころではなくなってしまうだろう。
無策で突っ込むつもりはないが、あまり悠長にしているとまずいかもしれないと水琴は気を引き締めた。
目指すは短期決戦。そのためには何はともあれ情報収集だ。
水琴とエースは大通りに並ぶ店を覗きながら片っ端から海賊に聞いて聞き込みを行っていった。
その結果分かったことはといえば。
「町中にはあんまり被害出てないみたいだね」
腹が減ったと喚くエースに食べ物を買い与えながら行った聞き込みによれば、海賊たちは大通りを中心とする繁華街では暴れていないようだ。
時折態度が悪い様子を見かけることはあってもそれだけなので、海軍に通報もしていないという。
「海賊の私が言えることじゃないけど、賞金首って時点で被害がなくても通報した方がいいと思うんだけど」
「自分たちに被害がなく通り過ぎてくれるんならムダにつついて恨み買いたくねェんだろ。一応金は落としてるみてェだしな」