第102章 船医
にやりとエースが口元を上げ拳を打ち鳴らす。
決まりだね、とチズルは船の設計図らしきものをトウドウへ差し出す。それを受け取るとトウドウはエースたちを振り向いた。
「船の方は俺に任せて、三人は海賊の方頼んだぜ」
「分かった」
「またあとで」
ドッグから見送られ、外に出た三人はそれぞれの想いを込め顔を見合わせた。
「……助けられちゃったね」
「こりゃ早いとこ名を挙げねェとトウドウに足向けて寝れねェな」
まずは海賊を見つけようと言う二人に対し、それなんだがとデュースが口を開いた。
「いったん別行動にしないか」
「いいけどお前はどうすんだ」
「船医の当てを探しておきたい。まさか海賊退治まですることになるとは思ってなかったからな。同時並行で動かねぇとムダに時間を使うことになる」
お前らは海賊の情報を、俺は船医の情報を探って昼に酒場に集合でどうだ、とのデュースの提案に異論もなく頷く。
「確かに、その方がいいかもね。海賊はともかく船医候補を探すのは時間がかかりそうだし」
「海賊船に乗っていいっていう医者がいてくれればいいけどな。__念のため言っとくが、海賊を見つけたからって勝手に突っ込んでいくなよ」
誰とは言わないが、と付け加えながらデュースは半眼で船長を見つめる。
当のエースは任せろ、と自信満々に頷いた。
「デュースの取り分もちゃんと残しといてやるよ」
「そういう心配してるんじゃねぇよ」
水琴、頼んだとがっくりと項垂れるデュースに対し、水琴は遠い目で返した。
「……ごめん、自信ない」
乱闘に突っ込むエースを止める術があるなら私が知りたいと切に思う水琴だった。