第102章 船医
「__お前、本気かい」
「あァ本気だ」
トウドウが叩きつけたのは真珠のネックレスだった。
その大きさは普通のものよりも二回り以上あり、輝きも装飾も見事なものだった。
一目で価値の高いものだと分かる。
「俺の村ご自慢の宝珠だ。これを付けるんならどうだ?」
「村の形見を、こいつらの為に使うってのかい」
「勘違いすんなよ。これは担保だ。こいつらはいつかでかいことをする!そうすりゃ一億なんてあっという間さ」
「……でかいことね」
いいだろう、とチズルはそのネックレスを受け取った。
「トウドウさん!そんな大切なもの……」
「預けるだけだ、いいってことよ。俺はお前らを見込んでんだ」
信頼の込められた笑みに何も言えなくなる。
エースとデュースも同様だったのだろう。黙り込む三人の間にただし、とチズルの声が割って入った。
「コイツを担保にしても下げられるのは七千万までだ。これ以上はまけられないね」
うまくいくかと思ったがやはりそう簡単にはいかないらしい。
「あと二千万……」
「残りはそうさね。二、三日前から町に厄介な海賊が滞在してる。そいつを退治してくれたら考えてやらないこともない」
二本の槍とドクロを掲げた海賊旗だ、とチズルは苦々しく吐き出す。
「船の修理で寄ったらしいが、あまりにも礼儀がなってないんで“丁重に”お断りを入れたんだがね。どうも納得してないらしく何度説明しても船を直せの一点張りで話になりゃしない。しまいには住人にも手を出し始めてほとほと手を焼いてんのさ」
「その海賊をやっつけりゃいいんだな?」
「あぁ。その海賊を“説得”してきてくれるなら、お前らの持つ五千万とそいつの真珠でチャラにしてやるよ」
「その話乗った!」