第102章 船医
チズルに案内され通された先には一隻の船があった。
船首についているのは馬だろうか。海賊船にしては可愛らしいデザインだがメリー号の例もある。
「……これは」
「ピースオブスパディル号。あたしがデザインした自信作だ。この船に乗り越えられない海はないね」
今まで乗っていた船よりもだいぶ大きい。
しかし最新式の操縦モデルを使用しているため、少人数でも操縦は可能だという。
「へー。こりゃいいな」
デュースから解放されたエースがいつの間にか追いつき船を見上げる。
その背後からトウドウとデュースもまた船を見て感嘆の息を漏らした。
「気に入った。ば……チズルさん。これいくらだ?」
「一億ベリー」
「一億……?!」
「それは、さすがに……」
とんでもない額にデュースと顔を見合わせる。
しかしサウザンドサニー号が二億だったのだ。それ位はするだろう。
だが、今水琴たちの手持ちは全財産合わせても五千万程度が限界だ。
船の相場など知らなかった水琴は自分が甘かったことを知った。
「チズルさん、もう少しなんとかなんねーかな」
「ならないよ」
「そこをなんとか!」
トウドウが必死に値切るが、たとえ多少値が安くなったとしても買えるとは思えない。
「他のにする?」
交渉を続けるトウドウを見ながらエースへ囁く。
残念だが、予算に見合った船を探すしかない。
「いや。おれはあれが良い」
「でもお金足りないよ」
「適当に二つ三つ海賊襲うか?」
さらりと不穏な提案をするエースの前にこれでどうだ!とトウドウの声が響いた。