第102章 船医
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港に船を付け、町へ降りればそこは結構な賑わいだった。
宝を換金した町もそこそこ大きかったが、ここはそれ以上の規模だ。少し気を抜けば人混みに呑まれはぐれてしまいそうになるのに気をつけながら、水琴は三人の後をついて歩く。
「この辺りの交易の中心地だからな。色んな奴がいるから気を付けろよ」
「海賊が気を付けなきゃいけない相手ってなんだよ」
「そういやそうだ!」
エースの返しにがっはっは!とトウドウが笑う。
「ここで船医も見つかればいいな」
「船医?」
隣を歩くデュースの呟きに水琴は首を傾げ彼を見上げた。
「デュースがいるのに?」
「俺は所詮元医学生だ。応急処置くらいならできるが、グランドラインに出るならもっと知識も経験もある奴を仲間にした方が良い」
ってか、船医が見つかるまではグランドラインに出るのは断固反対だぞ、とデュースが低い声音で付け加える。
医学生だった彼がここまで言うのだ。いつか見つかればいいだろうくらいに考えていたが、船医の獲得は優先順位高めに考えておかなければならないだろう。
「デュースが言うならその方が良いんだろ。船医もあとで探すとして、とりあえず船はどこにあんだ?」
船はまだかとそわそわと落ち着きのないエースが焦れてあげる声にトウドウは慌てなさんなと笑みを浮かべる。
「こっちだこっち」
トウドウの先導で歩いていけば、大きなドッグが見えてきた。
作業を行う船大工の間を慣れた足取りですり抜けていき、トウドウは開かれたドッグを覗き込み大声を上げる。
「おーいチズルさん!」
トウドウの大声に付近の船大工が顔を上げ反応するが咎める者は誰もいない。
手を挙げ挨拶を交わす者さえいる。どうやら見慣れた光景らしい。
「チズルさんって?」
「このドッグのオーナーだ。自身も凄腕の船大工でな。うちの船もよく厄介になってたもんよ」
ほら来た、と示す先でかつりと硬質な音が響く。