第101章 航海士
「__分かっちゃいたんだ」
転がった銛を拾いトウドウが呟く。
「あれから三月だ。村一つ潰されれば簡単に噂は広まる。だが、諦められなかった。……例え一人でも、誰か残っていてくれればと」
漁師団を壊滅させたアーロンが村を放っておくわけがない。
しかしそれでも、自分の目で確かめたかったのだと。
「乗り込むなら手を貸すぜ」
「いや、生憎仇打ちは性に合わねェんだ。それに、仇を討ったところで村のみんなが帰ってくるわけじゃねェ」
ありがとよ、とトウドウは笑う。
それにエースは何も返さなかった。
「……これからどうするんですか」
「そうさなァ。どうするか」
空を仰ぐ。聞いておきながら水琴は酷な質問だったと思い目を伏せた。
こんなことになって、すぐに思いつくわけがない。
「お前、おれ達と来いよ」
「エース……?」
おもむろに言葉を発すエースをデュースが困惑と共に見つめる。
「やることが思いつかないなら、それまで一緒に来ればいい。
おれ達はグランドラインを目指してる。優秀な航海士が仲間になってくれりゃあ助かる」
「……驚いた。お前、こんな親父を誘ってくれんのかい」
「年齢は関係ねェよ。おれは気に入った奴しか仲間にしねェ」
「そうかいそうかい。……くはは」
トウドウは小さな笑みを零すと、手を差し出した。
「改めて、俺はトウドウ!
海に関して俺の右に出る奴ァいねェ!よろしく頼むぜ船長さんよ!」
「おう!」
がっしりと手を取り合う。
数時間後、新たに航海士を加えたエース一行は次の地へと出航する。
小さくなる船をひっそりと建つ墓石と突き立てられた銛が見送っていた。