第101章 航海士
「お前ら、アーロン一味って知ってるか?」
「アーロン……?!」
まさかの名前に水琴の心臓ははねる。
エースは分からなかったのか、眉を潜め首を傾げていた。
「誰だ?」
「魚人海賊団をまとめ上げてるサメの魚人だな。そういえば少し前に新聞で騒がれていたな」
エースの疑問にデュースが答える。
新聞記事のことは知らないが、アーロンという名前には心当たりがありすぎた。
ナミの故郷を苦しめていた張本人。
確かにこの時期にはもう東の海にいたはずだが、まさか他にも被害があったなんて、と知らなかった事実に水琴は言葉を失くす。
「よく知ってるな。その通り。あいつらに俺達の船は為す術もなくやられた」
仲間はどうなったのか分からない。
気がつけばトウドウは遠く離れた島へ流れ着いていたのだそうだ。
命があっただけでも奇跡だ。
「それからなんとか村へ帰ろうと一人旅してきたってわけよ。だから、海賊って聞いて少し身構えちまってな」
悪かった、とトウドウは頭を下げる。
「お前らは悪い奴じゃねェ。好き勝手に民間人襲うような奴らには見えねェ」
「当たり前だ。おれが襲うのは海賊で、民間人じゃねェよ」
「トウドウさん。あなたの村ってどの辺りなんですか?」
「……おい水琴」
「ダメ?」
首を傾げてエースを見る。どうやらこの後水琴が何を言うか分かってるらしい。エースは大きく溜息を吐くと頷いた。
「どうせどこかの村に寄らなきゃいけねェしな」
「猟師の村なら船の整備にもちょうど良さそうだしな」
「じゃあ決まり。
トウドウさん。せっかくですからあなたを村まで送っていきます」
「……なんだって?」
いいのか?と尋ねるトウドウにもちろん、と水琴は笑顔を返す。
「船もないんじゃ、どっちみちどこかで調達しないといけないでしょう?私達もどこかで補給したいと思っていたんです。トウドウさんに案内してもらえたらすごく助かります」
「そりゃ願ったり叶ったりだ!ここら辺の海で俺が知らねェことはねェ」
今日はついてる!と喜ぶトウドウが席を立ち手を差し出す。
「よろしく頼むな、船長さんよ」
「エースだ」
差し出された手をしっかりと握り、船はトウドウの村へと針路をとった。