第101章 航海士
「……冗談だろ」
「てめ__ッ!」
「エース、落ち着いて!」
「病み上がりに手を出そうとするな!」
立ち上がりかけるエースを水琴とデュースが両側から必死に抑える。なんとか椅子に座らせると、水琴はトウドウに向き直った。
「トウドウさん。信じてもらえないかもしれないけど本当なんです。と言っても、まだ発足したばかりの海賊なんですけど」
「じゃあメンバーはお嬢ちゃんと先生とそっちので三人か?可愛らしい海賊団だな」
「馬鹿にしてんのか!」
「いやいや、そうじゃねェよ。言い方が悪かったな」
そうじゃねぇんだ。と呟くトウドウの表情は複雑だ。
「トウドウさん……?」
「悪かったな。海賊にも色々いるんだと思ってな」
ちょっくら話聞いてくれるか、とトウドウは語り始めた。
「俺はさっきも言ったように、漁師団の団長を務めてる。漁師団ってのは、簡単に言やァ村公認の海賊だな。と言っても略奪はしねェ。俺達がするのは防衛だ」
複数の村から集まった精鋭の漁師達が海賊からそれぞれの村を守るため順繰りに海に出る。
それをまとめ上げていたのだとトウドウは語る。
「俺達の村は真珠が有名で、それを狙ってよく海賊が現れてたんだ。もちろん漁師とはいえ防衛を託されてるつわもの揃いだ。今まで一度も海賊の略奪を許したことなんて無かった」
それがあの日……
記憶を辿っているのか、トウドウの表情に暗い影が落ちる。