第16章 家族
「勝負あったな。これ以上抵抗すんなよい」
「く……っ!」
激闘の跡が残る中、女が倒れ伏す。その横にはマルコ。
「お前たちは…何をしようとしているか分かっているの?!“異世界の民”が世間に出れば、いらぬ争いが生まれる…海賊が、所有していいものじゃない!!」
「所有ねェ……」
地に伏せながらも強い視線でマルコを睨みつける女を見下ろす。
「…一つ聞く。お前らは、あいつを保護してどうしようってんだよい」
「決まっている。研究の末万能薬を完成させる。そうすれば、多くの人が救われる」
「そりゃ大層ご立派な“正義”だよい。で、それからは?」
「あの存在は脅威よ。海軍の然るべき施設で管理される必要があるわ」
「然るべき施設ねェ」
「お前たちは何も分かっていない。異世界の民の血の恐ろしさを」
マルコを睨む目には揺ぎ無い正義があった。
「あァ何も分かっちゃいないよい。だがな、お前たちも分かっちゃいねェよい」
「何を……?」
「あいつは、人間だ。保護や管理なんて、あいつには必要ねェ」
あいつは、自由に生きる権利があるんだよい。
そう言い残し、マルコは橋を渡る。
末っ子たちを迎えに行くために。
***
「こんな逃げ場のない所に来て、どうするつもり?」
連れてこられた塔のてっぺん。
最初に目が覚めたのと同じ部屋で私はベルクと対峙していた。
「もうすぐバスターコールで収集された軍勢が押し寄せる。ここにいては巻き込まれるからな。先に失礼させてもらう」
「一体どうやって…」
「これでさ」
ボタンを押す。すると壁の一角が大きく開かれ小型の飛行艇が現れた。この場で見ることがないものに驚き目を開く。
「異世界の書物を元に作ってみた。空を飛ぶ道具だ」
「こんなものまで…」
「さぁ、乗れ」
「っいや!!」
乗ってしまえば終わりだ。必死に抵抗する。