第100章 仮面の男と新たな仲間
「水琴、こっちだ!!」
と、下方から聞こえた声に視線を向けた。甲板に立つエースに気付き、水琴は前に押し出そうとしていた風の向きを変える。
弾き返そうとしていた風はトカゲモドキを横へと受け流し、崖から引き離した。
掴む場を失ったそれは滑空し、甲板__エースの元へと迫る。
「アイツなに突っ立ってんだ!殺されるぞ!」
「大丈夫」
慌てるデュースの横に並び水琴は短くそう答える。
仮面越しの瞳を覗き込み、誇らしげに水琴は笑った。
「うちの船長、強いから」
落ちていくそれはあの帆のようにその身をずたずたに引き裂こうと鋭い鉤爪をエースへと向ける。
近付いてくる巨体に、エースは足を一歩引き深く腰を落とし、構えた。
振り下ろされる爪を避け、懐に飛び込む。
握り込まれた拳がその巨体を捉えた。
鈍く、重たい打撃音が響く。
一瞬後に巨体に似合わぬ速度でトカゲモドキは岸壁に叩きつけられた。
「ね?」
言ったでしょ、と水琴は呆然と岩に埋もれる巨体を見下ろすデュースを振り返る。
「おーい、帆見つかったぞ」
甲板では何食わぬ顔でエースが巻かれた布片手に手を振っていた。