第100章 仮面の男と新たな仲間
「っ疾風!!」
休むことなく次を打ち出す。しかし風の刃もまたその身体を傷つけることは愚か怯ませることすら出来なかった。
まったく効いていない様子に唇を噛む。風は元々形のないものだ。水琴の今の実力ではその身体に傷をつけることは難しかった。
それでもこの場を退くことは出来ない。倒すことは出来なくても守れるよう、水琴は再び腕を上げた。
「突風!」
飛び掛かろうとしていたそれに再び風をぶつける。思い通りに距離を詰めれない苛立ちからか、それは耳障りな声を上げ崖を上へ下へと動き回った。
伝わる震えにデュースは落ちないように必死にしがみつく。この状態では上まで上がることは難しい。
かといって腹が減っているのか眠りを妨げられて苛ついているのか、あっちも退散してくれそうにない。
消耗戦だ。どちらの分が悪いかは考えるまでもない。
「やめろ水琴!そんな怪物に敵うわけねぇだろ、俺に構わず逃げろ!」
「嫌っ!!」
焦れるデュースの叫び声に水琴もまた叫び返す。
「言ったでしょ、私たちもう仲間だって!それに私は誓ったの」
この右足に。刻んだ誇りに。
いつだって、彼らに誇れる自分で在るようにと。
「ここで仲間を見殺しにするような海賊になるなんて、私はごめん!!」
「__っ」
背後で息を呑むデュースに気を配る余裕もないまま、水琴は第三の突撃を防ぐため風を生む。