第100章 仮面の男と新たな仲間
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真新しいマストに帆が張られる。
三人を乗せた船は水琴の風を受け勢いよく島から飛び出していった。
島へと引きずり込もうとする波も前へ向かう水琴の風には敵わない。
あっという間に小さくなる島へ別れを告げ、エースは金貨の詰まった袋を機嫌よく叩いた。
「これだけありゃ新しい船が買えるな。仲間も増えたし、もうちっと大きい船買おうぜ」
「……あのな。何度も言うけど、俺は」
「作家になりてェんだろ」
デュースの言葉を遮りエースが彼の夢を語る。
まさかそこを掘り返されると思っていなかったのか、デュースは続ける言葉を呑み込んだ。
そんな彼にエースはまっすぐな視線を向ける。
「おれの船で書けよ。きっとすげえ冒険記が書けるぜ、保証する」
ブラッグメンなんて目じゃねぇくれぇのな、と続けるエースに話ちゃんと聞いてたんじゃねぇか、とデュースが零す。
どうする?と水琴が尋ねればデュースはしばしの沈黙の後、大きく息を吐いた。
「__最低でも、男女で部屋は分けろ。これは絶対だ」
デュースの言葉に水琴とエースは顔を見合わせる。
そして、にっと笑った。
「さんせーい。ついでに湯船付きがいい!」
「風呂なんて場所取るだけだろ。それよりもでっけェ冷蔵庫入れようぜ。肉たくさん入るやつ」
勢いよく前へ進む船の中で、三人になった海賊団は新しい船の話に花を咲かせる。
水琴の風を受けてもびくともしないマストの上では、黒旗がたなびいていた。