第7章 うなれ体育祭
保健室を出て昇降口に向かって歩いていると、両手をポケットに入れて廊下の壁に寄りかかっている爆豪さんと出くわす。私は誰かを待っているのかな?と疑問を抱きながらも横を通り抜けようとすると彼に声をかけられた。
「おい」
『爆豪さん。さっき帰ったんじゃ』
私に用事があったのかと内心驚きつつも平然を装って返事を返す。すると爆豪さんは私の姿を見て一瞬言葉を詰まらせた後に口を開いた。
「…怪我は、もう大丈夫なんか」
『うん。異常なしだって』
怪我の心配をしてくれているのか苦虫を噛み潰したような顔で聞いてきた。あまりの彼の表情と言動の不合致さに私は思わず苦笑いを浮かべた。そして先程ので会話は終えたのだと思い、私は爆豪さんに別れを切り出そうとしたのだが
「明日の放課後、空いてっか」
『え、空いてるけど…』
そんな突然の彼の提案に私は目をこれでもかと見開き、動揺を示しながらも返事をする。
「なら放課後、体操着着て体育館前に来いや」
『うん…わかった』
要件だけを私に伝えるとそそくさと帰って行った爆豪さん。私は表情に出ずとも心の中はパニック状態で暫くその場から動くことが出来なかった。
そして時間は過ぎて次の日の放課後。爆豪さんとの約束の時間になった。待ち合わせ場所にはしっかりと爆豪さんがいて、私が来たことに気がつくと体育館の扉を開いて顎で指図した。
「中入れや」
『う、うん』
体育館の中は訓練場となっていて今から何が起こるのか…なんとなくの予想が着いた。
『ここ、使って大丈夫なの?』
「体育祭の為の練習に使うつって許可とった」
用意周到なようで使用許可は承諾済みだった。
体育館及び訓練場の真ん中まで移動すると私に背を向けていた爆豪さんが向き直り、顔を見合わせる。そして着ていた体操着を脱ぎ捨て、私を指さして口を開いた。
「今から俺と模擬戦しろ」