第7章 うなれ体育祭
申し訳なさそうに眉を寄せる緑谷くんを見て、オールマイト先生は口から血を垂らしながら緑谷くんに負い目を感じさせないためか、話の話題を体育祭に逸らす。
ワン・フォー・オールの調整がまだ出来ない緑谷くんはどうしたものかと両腕を組むと、オールマイト先生が「とりあえずお茶でも飲みなよ」と言いながら先程お茶を注いでいた湯のみを緑谷くんと私の目の前に差し出す。そして緑谷くんが湯のみを手にしてお茶を飲もうとした時、彼はふと思い出したように声をもらす。
「……あ…でも1回…!脳ミソヴィランに撃った時…反動がなかったんです」
「ああ!そういや言ってたな!!何が違ったんだろ」
「違い…今までとは明らかに違うのは…」
緑谷くんは手を口に当てながら蚊の鳴くような声でブツブツとUSJの時の事を振り返る。
『おぉ…緑谷くんの十八番だ』
「……初めて…”人”に使おうとしました」
私が緑谷くんの呟く姿に感心していると緑谷くんは少し間を置いて手をギュッと握り締めるそしてその拳を見つめながらそう言った。
『あの時、無意識的にブレーキをかけることに成功したって感じかな…』
「なんにせよ…進展したね良かった。ぶっちゃけ私が平和の象徴として立っていられる時間って実はそんなに長くない」
「そんな…」
「悪意を蓄えている奴の中にそれに気づき始めている者がいる。君に”力”を授けたのは”私”を継いで欲しいからだ!」
まだ緑谷くんは高校1年生…そんな彼に”平和の象徴を継ぐ”と言う重圧が既にかかっている…彼は、緑谷くんは。それをどう受け止めているのだろうか。
「体育祭…全国が注目しているビッグイベント!今こうして話しているのは他でもない!!次世代のオールマイト…象徴の卵…」
オールマイト先生は緑谷くんを鼓舞するように自身の声に力を込める。そしてその迫力は緑谷くんだけでなく私の肌にもビリビリと伝わってくる。
「君が来た!ってことを世の中に知らしめてほしい!!」