第6章 ヴィラン襲来
塚内さんの事情聴取が終わった後、私の怪我の状況を見て病院に移動するか否かの話が持ち上げられたのだが、リカバリーガールの治療のおかげで入院をする程の怪我にはならなかったので私と緑谷くんは塚内さんの車に乗せて頂き、各々の家まで送られた。
『ただいま』
「言っっ!!!」
ゆっくりと玄関の扉を開け、帰宅の言葉を口にした途端百ちゃんが私目掛け凄い勢いで抱きついてきた。抱きつかれたのが本当に一瞬の事だったので百ちゃんはずっと…私が帰ってくるまでずっーと玄関の前で待っていたのだろう。
「心配したのですよ!本当にっ……!」
私の首に腕を回していた百ちゃんは目に大粒の涙を溜めてその場に泣き崩れてしまった。
『百ちゃん…』
学校にいる時とは違って幼く弱々しい姿を見せる百ちゃん。本当に心配を掛けてしまったんだと、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。私はその場にしゃがみ、両手で顔を覆って泣きじゃくっている百ちゃんの背中をさする。
「でも生きていてっ…本当に良かったです…!!」
『うん、私も百ちゃんが生きていて本当に良かった』
私はふっと笑みを零して百ちゃんを優しく抱きしめた。目の前にいる彼女を泣かせているのは自分の無茶な行動のせいでもあるのだが、彼女の口から出てきた”生きていて良かった”と言う言葉を聞いて罪悪感もありながら少しの喜びを覚えてしまう。そんな時パタパタと廊下を走る音が耳に入る。
「言さん!」
『お母様…』
自室から慌てた様子で駆けつけたお母様はその黒く澄んだ瞳に私を映すと、眉を寄せ涙目になりながら私と百ちゃん2人を覆うように抱きしめた。涙は流していないものの心配した表情を浮かべたお母様は百ちゃんそっくりだった。いや百ちゃんがお母様にそっくりなのか。
「こんな所にずっといるのもあれですからお部屋に入って暖かい紅茶でも飲みましょう」
そう言ってお母様は私たちに回していた腕を離し、立ち上がる。しかしいつまで経ってもその場から動かない私と百ちゃんにお母様は不思議そうに首を傾げた。
『いや、それが百ちゃん寝てしまって…』
「あら…でもまぁ、仕方がないわよね」