第6章 ヴィラン襲来
黒い霧に包まれその視界が晴れると目の前には、建物などが崩れ瓦礫や土砂が散乱している場所が映る。そして私の体にいきなりズンとした重みが伝わる。よく見ると私は地面から高さ15mの場所にいたのだ。私の体は重力に引き摺られるように急降下、地面目掛けて落下していく。
『…っ、【ショートカット】[大きいマット]!』
落ちると脳が判断したと同時に地面に衝突する前に個性を発動させた。私は出現させたマットの上に落下。落下の衝撃で1度大きくマットの上をポーンと跳ねたが、タイミングを見計らって地面に足を付ける。そして前方から轟さんの声が聞こえてくる。
「おい、無事か」
『轟さん!うん、大丈夫。轟さんもここに飛ばされた感じ?』
「あぁ、にしてもお前の個性…大きさとかも自由自在なんだな」
轟さんは不安定な地面に足を取られないように慎重に歩きながら近づいてくる。
『無茶なサイズじゃない限りは頭で想像して好きな大きさで出せるよ』
私がそう答えると轟さんは「そうか」と無愛想に返事をする。そして彼は何か言いたげな表情で私を見つめる。
『どうしたの…?』
「バスの時から言おうと思ってたんだが…話し方は普通なのに名前だけさん付けだと違和感があるからせめてくん付にしてくれねぇか?」
轟さん曰く、百ちゃんは話し方がお嬢様言葉なのでさん付けされるのに違和感は無いのだが私のように喋り方は標準的だけど呼び方はさん付と言うのが彼にはとても引っかかるらしい。
『それなら轟さんも私のこと”お前”じゃなくて名前で呼んでよ』
私は普通にくん付けで呼ぶことに抵抗は無いのだが、轟さんからは「お前」と呼ばれているのに自分だけくん付けで呼んでくれと頼まれるのは何だか癪に障ったので、そのような提案を持ちかける。
「わりぃ、苗字しか知らねぇ」
彼は表情を崩さずにそうスパッと言い切った。しかし声色は申し訳なさそうだったのできっと悪気は無いのだろう。
『えぇ…言。八百万言だよ』
「言か、覚えた」
『ほんとかなぁ…』
私はしぶしぶと自分の名前を彼に教えたが彼の性格からして本当に覚えたか少し心配になる。