第5章 慣れてきた時こそ
『えっと、辞書登録の事で…見せた方が早いかな。轟さんハンカチとか持ってる?』
「あぁ、ある」
『ちょっと貸してね。で、こうやって対象物に触ると【インストール】そして【ショートカット】[ハンカチ]』
私は轟さんからハンカチを受け取り個性を使う。すると先程轟さんに借りたハンカチとまったく同じものがもう1つ出現する。轟さんはその光景をみて目を輝かせ「すごいな」と私の目を見つめながら小さな声でそう呟いた。私は自分の個性を見て興味深々になる轟さんの以外な一面に目をぱちくりとさせる。
───轟さんって見た目の雰囲気とは裏腹に無邪気な子どもみたい…
「その辞書登録とやらには制限とかあんのか?」
さっきの説明で満足したと思ったらまだ満足していなかった様で、彼はグイグイと私の個性について聞いてくる。
(なんでこんなに私の個性聞いてくるの〜…)
私は心の中で勘弁してくださいと思いながらも、個性の説明をできない理由も特にないので話を続けた。
『うん、あるよ。インストールする物の容量が大きすぎると前に辞書登録してた物に上書き保存されてそれはもう出せなくなったりするの。あまりにも大きすぎたらまずインストールすら出来ないんだけどね』
「……正直言わしてもらうけどよ。やっぱりその個性、使い方によっちゃ八百万のより強くないか?」
轟さんは私が一番困る質問を投げかける。
───轟さんって…自分の地雷を踏み抜かれるのは嫌いなタイプだけど他人の地雷はズケズケ踏み込んでいくタイプだっ…!!
「あいつの場合は物出すのに時間がかかるけどお前のはほぼタイムラグなしで出せるだろそれってかなりアドバンテージでかいぞ」
『……い、いやいや買い被りすぎだよ。もしそうだとしたら今年の推薦入学百ちゃんじゃなくて私が通ってるはずでしょ』
「…まぁ、それもそうだな」
轟さんはあまり納得していない表情で首を縦に振る。
もう彼との会話で内心冷や汗はダラダラ。これ以上彼と話すのは心臓に悪いので早く訓練場について欲しいと切実に願ったその時────
「もうそろそろ着くぞ準備しておけ」
鶴の一声とはまさにこの事。タイミング完璧な相澤先生の指示のおかげで会話を切り辞めることが出来た。本当にありがとうございます、相澤先生…!!